滋賀県甲賀郡信楽町、四方を山に囲まれた焼き物の里に、陶芸家・保庭楽入氏が結んだ壺中庵。信楽焼の素朴な味わいに魅せられてこの地に入り、自ら茶道を学びつつ茶陶の道を極める氏が、陶と茶の魅力を広く伝えるために開放し、現在は息子である良三氏が訪れる人をあたたかく迎えている。

 自然に挑みながら、助けられながら土を形づくる楽しさを多くの人と分かち合いたい。信楽の里に咲く四季折々の野草の可憐な美しさを、多くの人と楽しみたい。そんな思いで作られる、壺中庵の茶陶の深くやさしい味わいは、アジアの工芸品たちと、まさに旧知の友であったかのようにおだやかに調和する。



 たとえばお客さまを迎える玄関脇のしつらえ。江戸時代に使われていたケヤキの蹴轆轤を中心にアジア各国のアンティークが並ぶ中、楽入氏作の獅子香炉が実に居心地よさそうに存在感を放つ。また、茶室小間においても、タイの藤製キャンドルスタンドやバリ島のアトゥバスケットの菓子器がなじみ、水屋には同じくアトゥバスケットが炭取りとして見立て使いされている。桃山から江戸にかけてベトナムの安南焼や、古渡り更紗を名物裂として愛でた茶人の粋が、時空を超えて息づいているのである。









 さらに目を移して、茶室広間の一隅には江戸時代の大名行列のお茶壷道中で使われていたという腰白献上茶壷と共に、アジアの各地で買い求められた香合や茶器がベトナムのラウンドシェルフに飾られている。

 そして、壺中庵のギャラリー、良三氏自らが作ったという大きな木と陶板のテーブルを囲む語らいの場では、抹茶や緑茶に加えてスリランカ直輸入の紅茶も出される。

 その一画には、各国のアンティークに交じり、さり気なく一服碗とスリランカの土瓶が・・・。

 縁あって訪れた人を心からもてなすという茶の心とアジアの温もりが、ここ壺中庵に静かに満ちている。


「別冊太陽 アジアの雑貨を楽しむ」P62-P63を再構成して掲載しました。
なお、壺中庵でのしつらえは、季節毎に変わります。
ご購入希望の方は
下記よりどうぞ。